肝炎とは

肝炎とは

臓器としては最大の大きさである肝臓は、消化管から取り込んだ炭水化物の余分をグリコーゲンとして貯蔵し、必要な際にエネルギーとして作り出したり、アルコールや薬剤などを代謝し、毒性の低い物質に変えて排出したり、さらには胆汁を分泌して、この胆汁が脂肪を乳化し、消化酵素であるリパーゼと反応しやすくすることで、脂肪の消化吸収に重要な役割を担っています。

この肝臓に炎症が生じ、細胞が壊れてしまった状態が、肝炎です。そのままにしておくと慢性肝炎や肝硬変に至ってしまいます。

肝炎には原因によって、肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性、常習的な飲酒によって引き起こされるアルコール性、サプリメントなどによる薬物性、また、何らかの原因により、自らの肝細胞を自分の体内の免疫が破壊してしまう自己免疫性などの種類があります。

ウイルス性肝炎について

ウイルス性肝炎の原因となるウイルスには、主にA・B・C・D・E型が知られていまが、D型ウイルスによる感染は、日本では非常に稀なものとなっています。また肝炎は経過度合いによって、急性・慢性、そして急性肝不全と分類することができます。

急性肝炎

A型、B型、E型肝炎ウイルスが原因となることが多く急激に肝細胞が障害される疾患です。基本的には自然治癒するものですが、一部の方は(1~2%)は重症化し、急性肝不全という重篤な病態に移行します。症状としては、発熱・喉の痛み・頭痛などの風邪に似た症状、食欲不振、全身の倦怠感、吐き気、腹痛、発疹、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、尿が茶色くなるなどが現れます。

急性肝不全

急性肝炎のうち8週以内に血液中の凝固因子の値が一定の値以下に低下したものを指します。肝臓の機能が急激に低下し、「肝性脳症」と呼ばれる意識障害などの重篤な症状が現れます。ひどい場合は昏睡状態に陥ってしまい、命の危険があります。全身の臓器に障害を引き起こす恐れが高いため、呼吸や循環など、全身的な管理が必要になります。

慢性肝炎

B型、C型肝炎ウイルスが原因となることが多く、慢性的に肝臓に炎症を生じ、肝機能の障害が続く疾患です。肝炎が6か月以上持続していると、慢性肝炎と診断されます。放置しておくと次第に肝臓が線維化し、肝硬変や肝癌に至ることもあるため、早期発見、早期治療が非常に大切です。

肝炎の検査について

肝臓の機能に障害が起こっていると考えられる場合、その原因を確認するために各種検査を行います。肝機能障害には、肝臓そのものに問題がある場合と、胆管結石や胆管癌、膵癌などが原因となり、胆汁の流れに問題が生じている場合が考えられます。

まず、肝臓そのものに原因があるかどうかは、血液検査によって確認することができます。これによって、障害の程度、機能低下の度合い、繊維化(肝硬変)の有無などを確認することができます。

また、ウイルスの感染が疑われる場合は、ウイルスマーカー検査を行い、癌の可能性を確かめるために腫瘍マーカー検査を行う場合が在ります。さらに超音波検査などの画像検査を行います。

肝炎の診断にあたっては、患者様に対して、問診を行い、病歴などもお伺いして、必要に応じ、上記のような検査を行っていきます。不安な点等がありましたら、ご自身の判断でそのままにしたりせず、お早めにご受診ください。

肝炎の治療について

肝炎は、その原因によって治療法が異なります。

ウイルス性肝炎の治療

A型
慢性化せず、ほとんどが自然治癒するものです。諸症状に対する薬物療法を行うほか、食事療法として、肝臓に負担を与えないような糖類中心の低カロリー食を摂るようにします。
B型
ウイルスの活動を抑えるため、核酸アナログ製剤などを用い、肝臓の障害が進行することを抑制します。現在の治療法では、ウイルスを完全に排除することは困難とされており、肝硬変や肝癌など、より重篤な疾患に進展させないことが治療の目標となります。
C型
C型肝炎ウイルスに対して、直接作動型抗ウイルス薬(経口薬)を適切に用いることで、ウイルスの90%以上を排除できるといわれています。これにより、ウイルスの完全な排除が治療の目標となります。
E型
慢性化せず、ほとんどが自然治癒するものです。諸症状に対する薬物療法を行います。

アルコール性肝障害の治療

まず原因となるアルコールを断つこと、禁酒が原則となります。禁酒することで、多くの方の肝臓は改善することがわかっています。ただし、約10%の方は悪化し、肝硬変へ進行してしまいます。アルコール中毒が重度の場合は、心療内科や精神科によるアプローチも必要となりますし、栄養状態が不良の場合は、カロリー、タンパク質、ビタミンを十分に摂取することが重要になります。

NAFLD(ナッフルディー)/NASH(ナッシュ)の治療

あまりお酒を飲んでいないにも関わらず、肝臓に脂肪がたまり、アルコール性肝障害に似た病態が現れるもので、生活習慣病との関連が強く、肥満や糖尿病などを合併する頻度が高いことから、生活習慣を改善し、肝硬変や肝癌などの重篤な疾患に進展しないようにしていくことが大切になります。食事療法・運動療法のほか、薬物療法を並行して行う場合もあります。

薬物性肝障害の治療

薬そのものの中毒性や、特異体質によって発症するものですが、多くの場合、早期に発見し、薬剤やサプリメントなどの原因物質を排除することで、比較的早く回復します。改善がみられない場合は、さらに原因を探り、治療方法を考える必要があります。

自己免疫性肝炎の治療

自身の免疫細胞による肝臓への攻撃を抑える必要があるため、基本的には副腎皮質ステロイドホルモンによる治療が中心となります。また免疫抑制剤を使用する場合もあります。症状の程度によって使用する薬剤の種類や量り調整が必要ですので、医師の指示に従って服用するようにします。